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秋の夕暮れ、保護犬ボランティアで出会った「初めての飼い主」が知らない現場のリアル——独身会社員が終生飼養を考える前に

モフユイナ編集部
取材・文: モフユイナ編集部 清水 編集部員
監修: 認定獣医師・第一種動物取扱シェルター長
calendar_today2026.10.25 公開 | update2025.10.14 更新
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保護80日目の朝・リハビリ完了
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保護から40日目、初めて自らスタッフの膝の上に顎を乗せて甘えてくれた瞬間。極度の緊張が解け、瞳に穏やかな光が戻った(世田谷シェルター兼一時預かり宅にて)

夕焼けに鳴く犬の声——ボランティア参加のきっかけ

十月のある土曜日、私は都内の保護犬施設でボランティア体験に参加した。きっかけは会社帰りに見たSNSの投稿だった。「散歩ボランティア募集中」の文字に、独身で平日はデスクワークの自分でも何かできるかもしれないと思ったのだ。夕方四時、施設に着くと、檻の中から一斉に犬たちが吠え始めた。担当スタッフの方は「みんな人懐こいんですよ。でも、ここに来るまでにいろいろな経験をしている子も多いんです」と静かに話してくれた。秋の風に乗って、犬たちの声が遠くの住宅街まで届きそうな夕暮れだった。

この日、私は三頭の犬の散歩を任された。どの子も歩き始めは警戒していたが、十五分もすると尻尾を振り始める。しかし、スタッフの方が「この子は車の音が苦手で、急に止まることがあります。リードを短く持ってください」と教えてくれたように、一頭一頭に異なる背景があることを知った。ボランティアは「かわいそう」という気持ちだけで続けられるものではない。犬の過去を理解し、今の状態を受け止める姿勢が求められる現場なのだ。

「初めての飼い主」が勘違いしやすい保護犬の現実

ボランティア体験で最も印象に残ったのは、保護犬を迎えた後のフォロー体制だった。施設では譲渡後も定期的に連絡を取り、困りごとがあれば相談に乗るという。しかし、中には「里親になったら終わり」と思っている人も少なくないと聞く。スタッフの話では、迎えたばかりの頃は誰でも張り切っているが、一か月もすると「思っていたのと違う」という連絡が増えるそうだ。特に独身の会社員の場合、平日の長時間留守番や急な残業が犬のストレスになることがあるという。

また、保護犬には過去のトラウマから特定の行動を見せる子がいる。例えば、ほうきを見ると怯える子、男性が苦手な子、食事の時に警戒する子などだ。これらは「しつけ」で簡単に消えるものではなく、時間をかけて信頼関係を築く必要がある。ボランティア中にも、スタッフが「この子は噛むから、そっと触ってあげて」と注意を促す場面があった。初めて犬を飼う人が、こうした行動を「問題行動」と決めつけてしまわないか、懸念を感じた。

終生飼養を現実にするために——独身会社員が準備すべきこと

終生飼養とは、犬が生涯を全うするまで飼い続けることだ。ボランティア体験を通じて、私はその重みを実感した。施設には、飼い主の事情で手放された犬も多い。引っ越し、結婚、転職、介護……。独身の会社員にとって、将来の生活変化は予測しにくい。だからこそ、迎える前に「もしも」を具体的に考えておく必要がある。例えば、転勤が決まったらどうするか。病気で入院したら誰に世話を頼むか。こうした問いに答えられないままでは、犬も人も不幸になる。

施設では「トライアル期間」を設けているところが多い。二週間ほど一緒に暮らし、相性を確かめる期間だ。この期間中に、平日の留守番や休日の過ごし方をシミュレーションできる。私がボランティアをした施設でも、トライアル中の相談が最も多いという。特に「朝の散歩と仕事の両立」「留守番中のいたずら」「夜鳴き」に関する悩みが目立った。事前にこうした情報を調べ、生活リズムを整えておくことが、迎えた後のギャップを減らすのだろう。

現場で見えた「迎える前に知るべき」三つのポイント

ボランティア体験から、初めて保護犬を迎える独身会社員が知っておきたいポイントを三つにまとめた。

  • 犬の背景を事前に聞く:保護された経緯や性格、健康状態をスタッフに確認する。特に苦手なものや怖がることを具体的に聞くと、迎えた後の対処がしやすい。
  • 平日の過ごし方を想像する:仕事の日はどれくらい留守番になるか、散歩の時間は確保できるか。自分の生活を書き出し、無理のない範囲を明確にする。
  • フォロー体制を確認する:譲渡後も相談できる窓口があるか、定期的な連絡があるかをチェック。困った時に頼れる場所があるだけで安心感が違う。

これらのポイントは、施設見学やボランティア参加を通じて具体的に知ることができる。秋の夕暮れ、犬たちの声を聞きながら、私は「迎える」ことの責任を改めて考えた。かわいさだけでなく、現実を見つめることが、終生飼養への第一歩なのだ。

秋の夜長に考える——自分の生活と犬の未来を重ねる

ボランティアから帰る道、私は自分の部屋で犬と暮らす想像をした。朝は早めに起きて散歩、仕事中は留守番、夜は一緒にくつろぐ。しかし、残業が続けば散歩の時間は短くなり、疲れて遊んであげられない日もあるだろう。それでも、犬は待っていてくれる。その期待に応え続けるためには、自分自身の生活管理が欠かせない。独身だからこそ、自分のペースを整えることが犬との暮らしを支える土台になる。

また、保護犬を迎えることは「助ける」ことではなく「共に生きる」ことだ。ボランティアで出会った犬たちは、人間に助けられるだけでなく、人間に多くのものを与えてくれる。秋の夕暮れに聞いた吠え声は、そんなことを教えてくれた。初めて犬を迎えるなら、まずはボランティア体験から始めてみてはどうだろう。現場を知ることで、見えてくるものがあるはずだ。

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