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シニア夫婦の保護犬終生飼養——年末年始の帰省をきっかけに「頼れる仕組み」を育てる小さな手順

モフユイナ編集部
取材・文: モフユイナ編集部 清水 編集部員
監修: 認定獣医師・第一種動物取扱シェルター長
calendar_today2026.10.24 公開 | update2025.10.14 更新
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保護80日目の朝・リハビリ完了
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保護から40日目、初めて自らスタッフの膝の上に顎を乗せて甘えてくれた瞬間。極度の緊張が解け、瞳に穏やかな光が戻った(世田谷シェルター兼一時預かり宅にて)

帰省の新幹線で気づいた「この子は誰に頼める?」

年末、夫婦で帰省するために新幹線の切符を取ったとき、ふと手が止まった。家に残す保護犬のチワワ混血、推定10歳の「ムギ」のことを、私たちはまだ誰にも正式に頼んでいなかった。息子は遠方、近所付き合いも浅い。夫は「二泊くらいなら大丈夫だろう」と言うが、ムギは昨年から夜中に一度トイレで起きるようになった。もし帰省中に体調を崩したら——。

この小さな不安が、私たち老夫婦にとっての終生飼養のスタート地点だった。迎えたときは「最後まで面倒を見る」と口にした。でも、その「最後まで」を支える具体的な仕組みは、何も整っていなかったのだ。

この記事は、そんな高齢者世帯が保護犬とこれからも暮らし続けるために、年末年始という区切りを利用して少しずつ備えを始めるための手順をまとめたものだ。特別な道具も大がかりな契約も要らない。日常の延長でできることから始めよう。

年末年始に整える「ゆるい連絡網」と「小さな分担」

まず取り組んだのは、近所で犬を飼っている人との「ゆるい連絡網」づくりだった。きっかけは、年末の挨拶で回ってきた回覧板だ。同じ町内に、毎朝柴犬を散歩させている70代の男性がいることを知り、思い切って声をかけた。「もしものとき、電話してもいいですか」と。向こうも同じ不安を抱えていたらしく、すぐに電話番号を交換した。

これは特別なことではない。犬を飼う高齢者同士は、互いに「預かり合う」とまではいかなくても、緊急時に声をかけ合える関係を持っておくと安心だ。大切なのは、いざというときに「犬を預かってほしい」と頼むのではなく、「様子を見に行ってほしい」という小さな依頼から始めること。ハードルが低く、相手も受け入れやすい。

次に夫婦間の役割分担を見直した。以前は散歩も食事もなんとなく妻の私が担当していたが、年末に夫が「俺は何をすればいいんだ」と聞いてきたのを機に、紙に書き出して分けた。散歩は朝が夫、夕方が私。食事と薬は私。トイレシートの交換とゴミ出しは夫。夜中のトイレ対応は、週ごとに交代制にした。完全に半分にする必要はない。互いの負担が見える形にするだけで、気持ちが楽になる。

さらに、年末年始の帰省に備えて「一時預かり」の練習をした。近所の犬友に頼んで、まずは半日だけムギを預けてみたのだ。預ける側も預かる側も、勝手が分からないと不安が残る。短時間の練習を一度しておくと、いざというときの心理的な抵抗がぐっと減る。このとき、ムギの食事の量、薬の有無、トイレの間隔、かかりつけの動物病院の連絡先を一枚の紙にまとめて渡した。これが後に「もしもカード」として定着した。

「もしも」に備える三つの具体策

1. 緊急時の連絡先を一枚にまとめる

冷蔵庫の扉に貼った「もしもカード」には、次の項目を書いた。犬の名前・年齢・体重、持病と服薬、かかりつけ動物病院の電話番号、夫婦それぞれの携帯番号、近所の犬友の番号、親戚の連絡先。さらに、かかりつけ医に「万一のときの延命措置の希望」も記しておいた。これは夫婦で話し合った結果だ。高齢の犬を看取る可能性を考えると、治療方針を事前に共有しておくことが、互いの負担を減らす。

2. 地域の「犬の一時預かり」サービスを下調べする

自治体や動物愛護団体が運営する一時預かり制度は、意外と知られていない。年末年始に帰省する前に、お住まいの地域の獣医師会やボランティア団体のホームページをチェックしてみよう。料金がかかる場合もあるが、登録しておけば安心材料になる。また、ペットシッターの利用も選択肢の一つ。ただし、高齢の犬の場合は事前に面談をして、投薬やトイレの対応が可能か確認することが欠かせない。

3. 散歩ルートを共有し、万一の際の捜索に備える

ムギがもし脱走したら——考えたくないが、備えは必要だ。普段の散歩コースを地図に描き、夫婦で共有しておく。また、首輪には迷子札をつけ、マイクロチップの登録情報が最新であることを確認した。年末年始は花火や帰省客の増加で犬が驚きやすい時期でもある。散歩中はリードを短めに持ち、車の音や人混みに注意したい。

今日からできる三つの行動提案

まずは、近所の犬友に「もしものときは声をかけてもいいですか」と一言伝えてみよう。次に、夫婦で一時間だけ話し合いの時間を設け、犬の世話の分担を紙に書き出す。そして、かかりつけの動物病院で「もしもカード」に書くべき項目を相談する。どれも特別な準備はいらない。年末の慌ただしさの中で、少し立ち止まって「この子と最後まで暮らすために、今できることは何か」を考える。その積み重ねが、高齢者世帯でも無理なく続けられる終生飼養の第一歩になる。

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