正月の気配に、保護犬は戸惑いやすい
「玄関のチャイムが鳴った途端、犬がテーブルの下に隠れてしまった」。保護犬を迎えて初めての年末年始、こんな相談は少なくありません。いつもと違う来客、遠くの花火や除夜の鐘、家族の笑い声のボリューム。人にとっては楽しい季節でも、犬にとっては初めてだらけの数日です。
特にシェルターで育った犬は、家庭の音や人の出入りにまだ慣れていないことがあります。大切なのは「犬の性格タイプを見極めて、正月の過ごし方を変える」こと。ここでは初心者にもわかりやすいよう、よく見られる3つのタイプと具体的なシーンを紹介します。
タイプ1:人見知り・警戒心が強めの犬
事例:来客のたびに震えてしまう
迎えて3か月の柴系ミックス、コハク(仮名)。普段は静かで、家族には少しずつ慣れてきたものの、お正月に親戚が集まった日は一日中ケージの奥から出てきませんでした。無理に抱き出そうとしたら、小さく唸ってしまったといいます。
解説:安心できる「逃げ場」が最優先
警戒心の強い犬は、知らない人が増える環境そのものが負担になります。しつけの前に、まず「どこにいれば安全か」を理解してもらう段階が必要です。来客時に無理に顔を合わせる必要はありません。ケージやサークルを静かな部屋に置き、上から布をかけて落ち着ける空間をつくることが、結果的に早い慣れにつながります。
行動提案:正月は「会わせない選択」を持つ
- 来客の時間帯は、犬を静かな部屋で休ませるスケジュールを先に決めておく。
- 家族以外が犬に触りたい場合は、犬の方から近づくのを待つ。おやつを床に置くだけでも十分。
- 帰省や旅行は、移動の疲れを考えて短めの日程に。慣れた環境に戻れる時間を確保する。
- 正月明けに、お世話の内容を家族で簡単に振り返り、負担が大きかった場面を共有しておく。
タイプ2:遊び好き・テンションが上がりやすい犬
事例:人が来ると飛びついて止まらない
若いミックスのモモ(仮名)は、とにかく人が大好き。お正月にいとこが来た瞬間、嬉しくてジャンプを繰り返し、リードを持つ手が引っ張られてしまいました。楽しいのはよいことですが、相手が小さい子どもだと転倒が心配です。
解説:「興奮のピーク」を事前に下げる工夫
遊び好きな犬は、刺激を受けると気持ちが高ぶりやすく、その状態では指示が届きにくくなります。来客前に軽く散歩をして体力を発散させたり、落ち着いて過ごせる場所でおやつを与えたりして、興奮の山をあらかじめ小さくしておくのがコツです。しつけの場面でも、まずは静かにできた瞬間をほめる方が、叱るより定着しやすいとされます。
行動提案:正月の「接触ルール」を先に決める
- 玄関対応は、犬を別室で待たせるか、家族の誰かが担当すると決めておく。
- 飛びつき対策として、来客には「座ってから挨拶」をお願いする。
- 室内で遊ぶ時間を一日に数回つくり、短時間で切り上げる習慣をつける。
- おもちゃは一度に出しすぎず、正月は特に「落ち着いて遊ぶ」を意識する。
タイプ3:マイペース・ひとりが平気な犬
事例:家族が集まっても自分の場所で寝ている
落ち着いた成犬のソラ(仮名)は、人が集まっていても自分のクッションで眠り続けます。一見すると問題なさそうですが、初めての飼い主は「懐いていないのかな」と不安になったそうです。
解説:距離感は個性。無理に構わない
ひとりで過ごすのが苦にならない犬は、自分のペースを守れるのが強みです。ただし、正月は家族の予定が変わりやすく、散歩の時間や食事のタイミングが乱れがち。甘え下手な面があると、体調の変化に気づきにくくなることもあります。
行動提案:「いつも通り」を守る小さな工夫
- 散歩と食事の時刻はできるだけ変えず、正月も同じリズムを意識する。
- 自分から近づいてきたときは、短くてもしっかり応じる。距離を詰めすぎない。
- 元気に見えても、食欲や排泄の変化はメモしておき、気になる点はかかりつけに相談する。
- 留守がちになる日は、事前に静かな場所と水飲み場を整えておく。
年末年始に共通して気をつけたいこと
どのタイプにも言えるのは、正月特有の「音」と「食べ物」への注意です。花火や鐘の音が苦手な犬には、窓を閉めてテレビや音楽を小さく流すのが有効なことがあります。また、おせちやお餅など人の食べ物は、誤飲や体調不良の原因になり得ます。テーブルに届く高さの場所には置かない、ゴミ箱はふた付きにするといった対策を、家族全員で確認しておきましょう。
初めて犬と過ごすお正月は、頑張りすぎないことが一番です。すべてを完璧にこなそうとせず、「犬が安心して眠れたか」を一日の終わりの目安にしてみてください。年の始まりに交わした小さな配慮が、これからの暮らしの土台になります。


